介護用品 販売の重要性を確認
そういう意味でも、グループホームを北欧に学んだ介護方式のひとつの有力な選択肢として整備を急ぐべきである。
さてこれまで述べてきたように、「寝たきり老人」問題をきっかけにして、日本の高齢者福祉制度が、北欧ショックの到来とあいまって近年急ピッチで変化の兆しを見せるようになってきた。
どのような変化があらわれてきたのか、時代の急転換を示す最近の注目すべき出来事を列記してみよう。
・特別養護老人ホームは、すでに説明したように、一昔前までは典型的な老人用の救貧施設で、入居することは所得や家族関係を厳しくチェックされ、行政によって「措置」(行政処分)されることを意味した。
だから入居を認められるということは、お金もないし面倒をみてくれる家族もいないという、要するに自立自助の世界から落ちこぼれた「窮民」であるという、不名誉な御墨付をもらうことになる。
ところが近年になり、数万円の自己負担を払い、快適ならざる四人~八人部屋でもよいからとにかく入居したいという希望者が非常に増えてきた。
それほど、この施設への入居希望が多くなった。
・これまでは最適とされていた家族介護の世界で、いわゆる「寝たきり老人」への虐待事件が多発している。
・高齢者の医療と福祉制度の最大のできごととして、「新ゴールドプラン」が成立した。
一九九〇年度から全国で展開され、幅広い市民を対象とし、ホームヘルパー、特別養護老人ホーム、老人保健施設、デイサービスなどを年次計画をたてて増やしてゆく旧「ゴールドプラン」が、一九九五年度には二倍近い規模に整備目標が上積みされて「新ゴールドプラン」となり、さらに推進される。
厚生省の一〇ヵ年計画が折返しの時点で、内容が大きくアップするということは滅多にない。
しかも四〇年ぶりの緊縮財政のもとで、予算化は非常に厳しかった。
にもかかわらず与野党をふくめた多数党の強い要望により、なんとか最終的にまずまずの予算がついた。
・経済専門紙である『日本経済新聞』に、こんな記事が掲載された「公的介護制度の拡充 経済成長を〇・二%押し上げ」(一九九四年一一月二八日)。
その内容は「いわゆる『寝たきり老人』など高齢障害者の介護を、『ゴールドプラン(旧)』で計画通り社会福祉サービスを拡充し、公的介護システムを整備すれば、介護の主な担い手である主婦が家族介護から解放されて働きに出られるようになり、潜在的な経済成長力が高まる。
推計では二〇〇〇年時点で、国内総生産(GDP)を〇・二%押し上げる効果がある」というM研究所の報告だ(健康保険組合連合会の委託による)。
経済大国日本の国内総生産の〇・二%とは約一兆円にあたるから、これはそうとうな経済貢献といわねばならない。
超高齢社会の到来と、政治の世界ではいわゆる「五五年体制」という、保守対革新というイデオロギー的な対立によりできあがっていた政治の世界の構造崩壊が、同時的に起こったことにより、新しい事態がもたらされたのだ。
ところで長寿化による高齢障害者の大量発生という事態は、生物界のなかですぐれて人類だけにみられる。
自然界で「子どもが親の面倒をみるのは人間だけ」といわれるゆえんである。
その理由を千葉大学法経学部助教授の広井良典氏はつぎのように述べている。
人間以外の哺乳類は生殖年齢を過ぎて、つまり子育て期を終わるとまもなく、朽ちるように生物としての一生を終える。
これは生物すべてに備わった遺伝子に秘められた指令により、ある時期がくると身体機能が老衰することと、老衰した生命の生存を許さない過酷な自然条件によってこうなる。
ところが人間だけが、生殖年齢十子育て期をはるかに過ぎて生き延びるようになった。
現代の女性が末っ子の自立を迎えるのは、五一歳。
そして五一歳まで存命した女性の平均寿命は八四歳。
じつに子育て終了後三〇年以上の「老年期」を持つことになった。
この長い老年期が、先にも説明したように同時に大量の高齢障害者-「寝たきり老人」要介護老人を生む。
そしてかんじんなことは,高い生活水準を達成して高齢化をもたらした産業社会では、同時に少子化か急速に進むことである。
世界中どこでも先進国共通にみられるのは、高齢社会とはじつは少子化がセットになる「少子高齢社会」なのである。
重い障害をもった高齢者の介護問題と、同時進行する少子化による労働力不足が、やがて経済成長を阻害するようになる。
この問題を解決するためには、女性が働きやすい条件を作らねばならず、介護などの福祉サービスを社会をあげて整備する必要が生まれてくる。
そこで北欧などの高齢化先進国では、保守とか革新といった立場をこえて、一九六〇年代から新しい社会システム構築への努力が、党派的利害をこえておこなわれたのだ。
これは経済と文化の発達がもたらした、人類史的な新しい事態として認識しなければならない。
いまだ高齢社会の人口にあるアジア諸国でも核家族・人口都市集中・介護問題と『齢化の悩みは同じ』なのである。
ちなみにその会議の報告では、高齢化が急ピッチで進みつつある韓国(高齢化率一九九〇年は五%、二〇一〇年は九・四%、二〇二〇年は一二・五%)でも、少子化傾向は著しく、一九六〇年代はじめには一世帯あたりの子どもの数は平均六人だったが、一九八四年には二こ人、一九九三年には一・七五人にまで減少しているという。
日本は急速な技術革新と、それがもたらした巨大な生産力と資本の蓄積を得た。
国民一人あたりのGDPでも、外国に金を貸せる債権国としても世界一となった。
ところがそうなると、こんどは生産効率追求だけでは経済が成り立たなくなる。
巨大な生産力にマッチした大量消費、健全な国内需要が必要だ。
しかも個人消費は伸びきり、個人消費による景気の回復は限界とも指摘されている。
大型の上木事業や巨大イベントに偏重した公的な国内需要の見直しが必要であり、そのまさに切り札として社会福祉の充実が登場しなければならない。
そしてもうひとつ、根本的な発想の転換が必要だ。
それはこれらの社会福祉制度の問題を解決する方法は、もはや、資本主義体制を選ぶか、社会主義体制を選ぶかといった、「体制」選択の問題ではなくなったということだ。
社会福祉を対立する思想や価値観の対決の道具にする時代は終わった。
・社会的弱者の権利擁護-革新。
・経済の足かせ、惰民政策-保守。
というような狭いとらえ方で福祉をきめつけて論議する時代ではない。
そうではなくて、福祉とは特定少数の市民のためのものではなく、圧倒的多数の市民にとって必要な社会サービスであるという、つまり「市民福祉」の時代なのである。
いいかえると多数市民の要求をみたすには、どのような「社会システム」が最適かという、改良主義的な政策プログラムを選択する問題として論ずることができるようになったということである。
これは、より広範な市民の政治参加の基盤がようやくかたちづくられつつあることを意味する。
いわゆる「寝たきり老人」は、すでに全国で一〇〇万人もいて、いまも増えつづけている。
このような背景のもとに、一九九〇年からスタートしたのが「ゴールドプラン」(高齢者保健福祉推進一〇ヵ年戦略)である。
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